造船技術を生かし大型の津波シェルターを開発 箱型形状で最大300人が避難可能

2013年1月10日

常石鉄工

[技術・開発]

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常石鉄工株式会社(広島県福山市沼隈町常石1083番地、代表取締役社長:財前正幸)は、大規模な津波や洪水襲来時の緊急避難設備として、市街地など陸上に設置する箱型形状の津波対応型シェルター(特許出願済)を開発しました。本体は長さ20メートル×幅7.5メートル×高さ約3メートルを標準サイズとした鋼製浮函型で、収容人数は100名から300名を想定しています。設置場所の状況や避難対象人数などに応じて大きさを変更するなど、導入地域の事情に対応する最適設計が可能です。一時的な避難のほかにも、内部に食糧や救急用品など防災備品を備蓄することで、被災後の救護所としても活用できます。さらに、水害地域の工場や保管倉庫として資材や設備の水没を防ぎ、事業の素早い復旧にも貢献します。

鋼製浮函型の津波対応型シェルターは、船舶のブロック建造工法を生かしてブロック構造を採用し、ユニット化したブロックを工場で製作し現地で組み立てます。自社製品の浮桟橋から発想を得た構造物で、船級協会※の設計・建造基準に準拠し、水密性や強度を確保します。本体4個所を係留チェーンで固定し、浮上時の安定性を保ち流出を防ぎます。(図1参照)出入り口は大型のハッチ構造で、歩行による自力避難が困難な人も車いすやベッドごと搬入可能です。

常石鉄工では、広島大学大学院工学研究院と昨年2月から共同研究を開始し、流体力学を専門とする博士(工学)の陸田秀実(むつだ ひでみ)准教授の技術指導を得て、同大学の大型波浪水槽で75分の1スケールの模型を用いて試験を重ねました。津波の波高や流速を変えて計測したシェルターへの流体力のデータをもとに、形状を決定しました。(図2参照)津波力を緩和するため壁面を斜めの形状にし、底部を双胴型にすることで浮力が生まれて浮上する構造様式となっています。津波による強い流れを上下・後方へ整流することで、シェルターに作用する津波力やシェルターの運動を低減・緩和して避難者の安全性を確保する構造です。広島大学では実験や数値シミュレーションなど学術的な基礎研究を進め、今後製作する実機のさらなる安全性向上に役立てていきます。

常石鉄工では、このほど設計図面のプロトタイプ製作が完了し、実用化の目途がついたことから、営業活動を開始します。今後は、津波による大きな被害が想定される太平洋沿岸や水位上昇が想定される瀬戸内海沿岸地域の自治体や病院などに提案し、大きさや仕様などのほか、設置場所を確保するための既存施設活用の要望など多様なニーズを実機製作に生かしていきます。

※船舶と搭載設備の安全性や性能を確保する技術上の基準を定め、設計、建造から就役の過程で基準に沿っていることを検査して船舶に船級を与える第三者機関。

図1

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図2

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水槽試験の様子
常石鉄工WEBサイトより
URL:http://www.tsuneishi-iw.jp/

■津波による人的被害を少なくするための設置場所案
 ~迅速に高台への避難が困難な住民のために~

①公園など地域の共有スペース
②病院の前庭や幼稚園などの園庭
③港湾地域・沿岸地域,大型河川の河口域
④屋根付き駐車場の屋根や建物のルーフバルコニー

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④のイメージ図
設置スペース確保のため既存施設の上空空間を活用し、隣接する施設から
直通通路を設け、速やかに避難できる経路を確保する方法を検討しています。

<常石鉄工の会社概要>

  • ■ 代表取締役社長:財前 正幸
  • ■ 事業内容    :製缶・機械加工および艤装工事
  • ■ 設立     :1963年(昭和38年)1月
  • ■ 資本金    :1億円

造船・海運を中心に事業展開するツネイシホールディングス株式会社の子会社。本社工場のほかフィリピン、中国に工場を持ち、グループ会社の常石造船株式会社と海外の造船工場に船体ブロックや舵、軸など船尾構造品を供給し艤装工事を担う。造船事業のほか、浮桟橋や橋梁なども製品に持つ

― 本件に関するお問合せ先 ―
常石鉄工株式会社
営業部

TEL:084-987-1321